病院から病院への転院、病院から施設や自宅への退院。
こうした搬送を介護タクシーへ依頼するとき、「何を伝えればいいのか分からない」ということもあると思います。
実際には、最初からすべての情報が揃っている必要はありません。
ただ、搬送する側として事前に分かっていると助かる情報があります。
特にストレッチャー搬送や医療的な対応が必要な方の場合、情報が不足していると、当日になって「この車両では対応できない」「追加の人員が必要だった」ということにもなりかねません。
今回は、転院・退院搬送を依頼するときに確認しておきたい情報を、実際の搬送現場の視点からまとめます。
まず必要なのは「どこから、どこまで、いつ」
最初に確認したいのは基本的な情報です。
- 搬送する日
- お迎えの時間
- 出発する病院・施設名
- 到着する病院・施設・自宅
- ご利用者のお名前
転院の場合、「10時に転院先の病院へ行きたい」という伝え方をされることがあります。
しかし、介護タクシー側が知りたいのは転院先の予約時間だけではなく、出発元を何時に出ればよいのかということです。
病院からの出発には、病棟から車両までの移動や申し送り、荷物の確認などで時間がかかることもあります。
また、転院先で採血・検査・レントゲンなどが予定されていて、診察予約より早く到着する必要がある場合もあります。
「○時予約だから○時に着けばいい」とは限りません。
転院先から指定されている到着時間がある場合は、その時間を伝えていただけると予定を組みやすくなります。
車いすなのか、ストレッチャーなのか
次に重要なのが、どのような状態で移動するかです。
例えば、
- 普通の車いす
- リクライニング車いす
- ストレッチャー
- 歩行可能だが介助が必要
では、必要な車両も機材も変わります。
「車いすです」と聞いて伺ったところ、実際には座位を保つことが難しかった、ということもあります。
反対に、ストレッチャーを想定していたものの、リクライニング車いすで十分対応できる場合もあります。
判断が難しいときは、無理に決める必要はありません。
「座っていることはできるが長時間は難しい」「ほぼ寝た状態で移動している」など、現在の状態をそのまま伝えていただいた方が、搬送事業者側で適切な方法を考えやすくなります。
酸素や吸引などの医療的な対応はあるか
転院搬送では、ここが非常に重要です。
- 酸素を使用している
- 搬送中に吸引の可能性がある
- 点滴をしている
- その他、搬送中に医療的な観察や対応が必要
こうした情報がある場合は、予約時に伝えてください。
単に「ストレッチャーで運べる車」があればよいとは限りません。
ご利用者の状態によっては、看護師など医療職の同乗を検討する必要があります。
また、酸素についても「酸素あり」だけではなく、可能であれば流量や搬送中に必要となる時間なども確認しておくと、必要量を考えることができます。
医療的な判断が必要な部分については、病院の医師・看護師などと確認しながら搬送方法を決めていくことが大切です。
階段や建物の状況
意外と忘れられやすいのが建物の情報です。
病院から病院への転院であれば問題にならないことも多いのですが、自宅への退院では重要になります。
例えば、
「自宅は2階です」
という情報だけでは十分ではありません。
エレベーターがあるのか。
階段しかないのか。
階段の幅はどのくらいなのか。
途中に曲がり階段があるのか。
玄関までに段差があるのか。
こうした条件によって、必要な人数や機材が変わります。
特にストレッチャーや車いすのまま階段介助が必要な場合、当日になって初めて分かると対応できない可能性があります。
分かる範囲で構いませんので、予約時に伝えてください。
ご家族や施設職員は同乗するか
転院・退院では、ご家族が一緒に乗るのかどうかも確認しておきたい情報です。
ご家族が同乗する場合は、その人数。
施設職員が付き添う場合も同様です。
一方で、
「家族が遠方に住んでいる」
「仕事などで付き添えない」
「施設職員も同行することが難しい」
というケースもあります。
付き添いがいないから転院できない、とすぐに考える必要はありません。
搬送内容によっては、介助スタッフや看護師などを別途手配する方法もあります。
誰が付き添えるのか分からない段階でも、まず搬送事業者へ相談してみるとよいでしょう。
荷物はどのくらいあるか
転院・退院では、ご本人だけが移動するわけではありません。
入院中に使用していた荷物や衣類などが大量にあることもあります。
車いす、ストレッチャー、ご家族、スタッフが乗車したうえで大きな荷物を積むとなると、車両によっては載せきれません。
荷物が多い場合は、事前にその旨を伝えておくと安心です。
「全部分かってから電話しよう」と考えなくても大丈夫です
ここまでいろいろな確認事項を書きましたが、転院や退院が決まった時点ですべて分かっていることは、むしろ少ないと思います。
「来週あたりに転院になりそうです」
「ストレッチャーになると思います」
「酸素を使っていますが、搬送中にどのくらい必要なのかはまだ分かりません」
この段階でも相談はできます。
特に、ストレッチャー対応車両、複数人での介助、看護師、酸素などが必要になる搬送は、条件が増えるほど手配できる事業者や車両が限られてきます。
日時がすべて確定してから探し始めるより、早い段階で相談しておいた方が選択肢を確保しやすくなります。
搬送は「車を1台予約する」だけではありません
転院・退院搬送というと、介護タクシーを1台予約すれば終わりと思われるかもしれません。
しかし実際には、
ご利用者の身体状況 × 移動方法 × 車両 × 機材 × 人員 × 医療的対応 × 建物環境
を組み合わせて、一つの搬送をつくっています。
だからこそ、予約時の情報が大切です。
そして、すべてを依頼する側だけで判断する必要もありません。
「こういう状態なのですが、どうやって運べばいいでしょうか」
そこから相談していただいて構いません。
搬送する側と依頼する側が必要な情報を共有し、一緒に方法を考える。
それが、安全でスムーズな転院・退院につながると考えています。


