退院が決まっても「もう大丈夫」と思わないで

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退院直後の移動で気をつけたいこと

「退院が決まりました」と聞けば、長い入院生活を送ってきたご本人やご家族にとっては、とてもうれしい瞬間だと思います。自宅に帰れる、いつもの生活に戻れる。ほっとすると同時に、気持ちも前向きになるでしょう。

ただ、一つだけ知っておいていただきたいことがあります。

「退院できる」ことと、「入院前の状態まで快復した」ことは、必ずしも同じではありません。

退院が決まったからもう大丈夫、家までの移動くらい何とかなる。そう考えて無理をしてしまうと、せっかく退院したのに体調を崩し、再び病院へ戻ることにもなりかねません。

だからこそ、退院するときには「どうやって帰るか」まで考えておくことが大切です。

退院できる=何でもできる、ではありません

入院中は、普段の生活と比べて活動量が少なくなっていることがあります。病院の中では問題なく歩いているように見えても、自宅へ帰るまでには思っている以上に多くの動作が必要です。

病室から病院の玄関まで移動し、車に乗り、一定時間乗車して、到着したら車から降りる。さらに自宅の玄関を上がり、廊下を移動し、場合によっては階段を上って寝室まで行かなければなりません。

普段なら何でもない一つひとつの動作でも、退院直後の身体には大きな負担になることがあります。入院前にはできていたことが、退院する時点でも同じようにできるとは限りません。

特にご家族が迎えに行く場合、「車に乗せれば、あとは大丈夫」と考えがちです。しかし、退院時の移動を考えるときに確認したいのは、病院から自宅までの距離だけではありません。

病室から自宅の安全な場所まで、ご本人が無理をせず移動できるか。

ここまでを一つの移動として考える必要があります。

「移動手段くらい大丈夫」と決めつけない

ご本人が歩けるのであれば、家族の車や一般のタクシーで帰宅できることもあります。一方で、少し歩けるからといって、退院時のすべての移動を歩いて行う必要はありません。

長い距離を歩くことに不安があれば車いすを使う、車いすに座り続けることが難しければリクライニング車いすを検討する、座位そのものが難しければストレッチャーでの移動を考えることもできます。自宅に階段があり、ご家族だけでは安全な介助が難しいのであれば、複数名での介助を依頼する方法もあります。

介護タクシーや民間救急などを利用することも、その選択肢の一つです。

大切なのは「頑張ればできるか」ではありません。今の身体の状態で、無理をせず安全にできるかで考えることです。

退院の日に無理をして体調を崩してしまっては、せっかく自宅へ戻ることができても、その後の生活に影響してしまいます。

ケースワーカーさんと退院前に話し合いましょう

退院時の移動方法は、ご本人やご家族だけで判断する必要はありません。「退院が決まったから、あとは家族で何とかしよう」と考える前に、病院のケースワーカー(医療ソーシャルワーカー)や退院支援を担当している方に相談してみてください。

「家まで歩いて帰れる状態でしょうか」「車の乗り降りは問題ありませんか」「自宅に階段がありますが大丈夫でしょうか」「家族だけで介助できますか」といったことを相談しておくだけでも、退院当日の準備は変わってきます。

その際には、病院でのご本人の状態だけでなく、ご自宅の環境についても伝えておくことが重要です。

たとえば、玄関までに階段がある、エレベーターのない集合住宅に住んでいる、寝室が2階にある、玄関からベッドまで距離があるといった情報です。病院側がご自宅の環境をすべて把握しているとは限りませんので、必要であればスマートフォンで玄関や階段の写真を撮り、見てもらう方法もあります。

こうした情報をもとに、ご本人の身体状況と住環境の両方から、どのような方法で帰るのが安全なのかを一緒に考えてもらいましょう。

退院はゴールではなく、生活へ戻るスタートです

退院が決まることは、とてもうれしいことです。ただし、退院は「すべて元通りになった日」ではありません。病院での生活から、日常生活へ戻っていくスタートの日でもあります。

「移動手段くらい大丈夫」「家族で何とかできる」「少しくらいなら歩ける」と決めつける前に、一度「この移動は、今の身体に無理がないだろうか」と考えてみてください。

わからないことがあれば、ケースワーカーさんや退院支援を担当する方に相談しましょう。その結果、家族の車で問題ないのであれば、それでよいのです。一方で、車いすやリクライニング車いす、ストレッチャー、介護タクシーなどが必要なのであれば、その力を借りることも退院準備の一つです。

無理をしないことも、退院後の生活を守るための大切な選択です。

せっかく退院できたのですから、病院の玄関を出ることだけをゴールにせず、安全にご自宅や施設へ到着し、そこから新しい生活を始めるところまで考えて退院の準備をしていきましょう。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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