院内で「あの人に聞けば何とかなる」と言われるMSWがやっていること

病院の中には、不思議といろいろな人から相談されるMSWさんがいます。患者さんやご家族はもちろん、医師や看護師、院内のスタッフ、地域の関係者まで、何か困ったことがあると「あの人に一度聞いてみよう」と名前が挙がる人です。

私は介護タクシーの仕事を始めて20年以上になります。この仕事をしていると、退院や転院、通院、施設への移動などを通してMSWさんと関わる機会が非常に多くあります。正確に数えたことはありませんが、これまで直接やり取りをさせていただいた方は100名近くになると思います。

20年以上同じ業界にいると、面白いもので、人のキャリアの変化まで見るようになります。開業した頃から知っているMSWさんの中には、今では役職に就いて管理する側になり、私たちが日々の手配で直接やり取りすることがほとんどなくなった方もいます。後輩を育てる立場になった方もいますし、病院を離れてフリーランスの講師として活躍している方、MSWとは違う業種へ進んで新しい仕事で成功されている方もいます。

昔は普通に「宮﨑さん、○日の退院なんですけど」と電話で話していた方が、久しぶりにお会いするとまったく違うステージで活躍している。そんな姿を見ると、20年という時間の長さを感じます。

そして昔を振り返ってみると、少し興味深いことがあります。

今、管理する側にいる人、人を育てている人、講師として活躍している人、新しい分野へ進んでいる人。もちろん歩んだ道はそれぞれ違いますし、当時の仕事ぶりがその後の昇進や独立、転職につながったと単純に言えるものでもありません。

ただ、今になって思い返すと、そういう方々はMSWとして現場で働いていた頃から、何となく印象に残っていることが多いのです。

私はMSWではありませんので、「MSWはこうするべきだ」と語るつもりはありません。むしろ20年以上、多くのMSWさんと一緒に仕事をする中で、私自身が仕事の仕方を教えてもらってきた側です。

その中で、「この方に相談すると話が早いな」「またこの方と仕事をしたいな」「この人のところにはなぜこんなに人や情報が集まるんだろう」と感じた方々には、いくつか似ているところがありました。

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何でも知っている人ではありませんでした

意外かもしれませんが、私がこれまで「この方はすごいな」と感じたMSWさんは、何を聞いてもその場で答えられる人ではありませんでした。分からないことについては、「そこは確認してみますね」と普通に言います。

ただし、そこで話が止まりません。誰に聞けばいいのか、どこへ問い合わせればいいのか、何を確認すれば次へ進めるのかを知っていて、確認した後にはきちんと次につなげてくれます。

医療、介護、福祉の世界には膨大な制度やサービスがあります。制度も変わりますし、地域によって利用できる社会資源も違います。それをすべて一人で覚えておくことは難しいでしょう。

だからこそ、知識をたくさん持っていることと同じくらい、「分からないことが出てきたときに、どうやって答えまでたどり着くか」を知っていることが大切なのではないかと感じます。

人とのつながりが、その人の力になっている

長く活躍されているMSWさんと話していると、「それなら○○さんに聞いてみます」「この地域なら、あの方が詳しいと思います」という言葉が自然に出てくることがあります。

これは単に知り合いが多いということではありません。実際に一緒に仕事をした経験から、「この人は何に詳しいのか」「この人ならどんな相談ができるのか」を知っているのだと思います。

一人の人間が持てる知識には限界があります。しかし、「この問題なら、この人に相談してみよう」という選択肢をたくさん持っていれば、自分が知らない問題に出会ったときにも答えに近づくことができます。

そして、人とのつながりを大切にしている方のところには、さらに人や情報が集まってくるように見えます。「こういうサービスが始まりました」「こんなケースなら相談できます」「今度こういう取り組みを始めます」と、すべてを自分から探しに行かなくても情報が入ってくるようになるのです。

知識そのものだけではなく、「誰とつながっているか」も、長いキャリアの中では大きな財産になるのかもしれません。

相談した後に、何かが一つ前へ進む

もう一つ、周囲から頼られている方に共通していると感じるのが、相談した後に何かが一つ前へ進むことです。

その場ですべての問題が解決するとは限りません。それでも、「では私から確認してみます」「まずここを確認しましょう」「この件なら○○さんにも聞いてみます」というように、次に何をするのかが見えてきます。

困っている人にとって、必ずしもその場で100点の答えが必要なわけではありません。「どうしたらいいか分からない」という状態から、「次はこれをやればいい」という状態になるだけでも、物事は前へ進みます。

何でも解決できる人だから頼られるのではなく、相談すると話を一歩前へ進めてくれるから、「またこの人に聞いてみよう」と思われるのかもしれません。

返事の早さも、信頼の一つだと思います

20年以上仕事をしてきて、もう一つ強く感じることがあります。それは、仕事ができると感じる方ほどレスポンスが早いということです。

もちろん、すぐに答えが出ない問題もあります。それでも「確認しています」「明日までには分かると思います」「今、○○へ問い合わせています」という途中経過があります。

相手にとっては、答えがまだ出ていないことよりも、「今どうなっているのか分からないこと」の方が不安になる場合があります。これは病院の外にいる私たちでも同じです。

返事が早いというのは、単純に仕事のスピードが速いというだけではなく、相手を不安にさせないことでもあります。そうした小さな安心の積み重ねが、やがて「あの人なら安心して相談できる」という信頼になっていくのだと思います。

一つの経験を、そのケースだけで終わらせない

長い年月の中で大きな差になっていくのではないかと思うのが、経験の残し方です。

一つのケースを通じて初めて制度を調べた、新しい相談窓口を知った、地域の専門職とつながった、先輩から知らなかったことを教えてもらった。そこで得たものを、そのケースが終わると同時に終わらせるのか、それとも次に使えるものとして自分の中に残していくのか。

一日ではほとんど差がありません。しかし、それを5年、10年と続ければ、その人だけの大きな「仕事の引き出し」になります。

経験年数というのは、単に何年間働いたかだけではなく、経験したことをどれだけ次の仕事に持っていける形にしてきたか、ということでもあるのかもしれません。

MSWとして身につけた力は、病院の外でも使えるのかもしれない

20年以上、多くの方のキャリアを見てきて、最近特に感じることがあります。

MSWという仕事を通じて身につけている力は、本人が思っている以上に幅広い場所で使えるのではないか、ということです。

相手の話を聞く。複雑な状況を整理する。必要な制度を調べる。複数の関係者と調整する。必要な人と人をつなぐ。限られた条件の中から別の方法を探す。そして、ときには本人や家族がまだ言葉にできていない希望まで考える。

こうして並べてみると、どれも病院の中だけで必要な能力ではありません。

実際、私が昔から知っている方の中にも、MSWとして経験を重ねた後、管理職になった方、人を育てる立場になった方、フリーランスの講師として活動している方、まったく別の業種へ進んで活躍している方がいます。

もちろん、どの道が正解ということではありません。現場のMSWとして専門性を深め続けることも一つの素晴らしいキャリアです。

ただ、若い頃に目の前の患者さんやご家族のために身につけた能力が、10年後、20年後には思いもしなかった場所で自分を助けることがある。そのことは、長くいろいろな方を見てきたからこそ感じます。

20年経って振り返ると、当時から少し違っていた

昔から知っている方が管理職になったり、講師になったり、新しい分野で活躍していたりする姿を見ると、「あの頃からそうだったな」と思うことがあります。

人との縁を大切にしていた。分からないことをそのままにしなかった。何か相談すると次の方法を考えてくれた。自分一人で抱え込まず、必要な人の力を借りることができた。

当時は、その人が将来どうなるかなど考えて仕事をしていたわけではありません。

20年以上経った今だから、そう見えるのです。

だから、これからのキャリアについて「まだ分からない」という若いMSWさんがいても、それでいいのだと思います。

今すぐ10年後の自分を決めなくても、今日知ったことを一つ残し、今日出会った人との縁を大切にし、目の前の仕事から一つずつ自分の引き出しを増やしていく。その積み重ねが、将来思いもしなかった選択肢につながることもあります。

「あの人に聞いてみよう」は、一日では作れない

周囲から頼られている人を見ると、知識があるから、経験年数が長いから、役職があるからだと思ってしまうかもしれません。

でも、「あの人に聞いてみよう」という信頼は、ある日突然できるものではないのでしょう。

分からないことを一つ調べる。相談されたら次の一手を考える。返事を待っている人には途中経過を伝える。一度出会った人との縁を大切にする。そして、一つの仕事から得たものを次の仕事へ残していく。

一つひとつは小さなことです。

それでも、それを何年も続けていくと、自分がいないところでも「あの人に一度聞いてみよう」と名前を思い出してもらえるようになる。

それは肩書きとは別の、その人自身に積み上がった大きな財産なのだと思います。

私自身、20年以上、多くのMSWさんと仕事をする中で、本当にたくさんのことを教えていただきました。

これからこのサイトでは、制度の解説だけではなく、そうした方々との仕事を通じて私自身が学んだことや、MSWさんが知っておくと仕事やキャリアのどこかで役立つかもしれない情報も発信していきたいと思っています。

全部覚えていただく必要はありません。

ただ、何か困ったとき、何か新しいことを始めたいとき、あるいは自分のこれからを考えたときに、

「そういえば、前にここで読んだな」

と思い出してもらえる。

そんな場所にしていけたらと思っています。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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