介護タクシーの仕事を20年以上続け、これまで延べ10万件以上の搬送に関わってきました。
病院へ向かう車内や診察を終えて自宅へ帰る車内、ご自宅で出発を待っている時間など、私たちは利用者さんやご家族といろいろなお話をします。体調のこと、病院のこと、ご家族のこと、介護のこと。その中で、意外とよく話題になるのが「担当のケアマネさん」のことです。
もちろん私はケアマネジャーではありませんし、ケアマネさんの仕事を評価する立場でもありません。ただ、10万件以上の搬送をしていると、利用者さんやご家族から聞こえてくる言葉にはかなり違いがあることに気づきます。
「うちのケアマネさん、本当によく動いてくれるんです」「何かあったらすぐ相談しています」「うちのことをよく分かってくれているから安心なんです」と、本当に信頼していることが伝わってくる方がいます。中には「あの人が担当で本当によかった」と話す方もいます。
一人の専門職がいることで、本人やご家族が「何かあっても大丈夫」と思える。これは介護の仕事の中でも、とても大きな価値だと思います。
一方で、「前にも言ったんですけどね」「お願いしたと思うんだけど、どうなっているのかな」「伝えたはずなんだけど、伝わっていないみたいで」といった話を聞くこともあります。
ただ、私はこういう話を聞いても「そのケアマネさんはダメですね」とは思いません。
ケアマネさんは多くの利用者さんを担当しながら、訪問、電話、事業所との調整、書類作成など、たくさんの仕事を抱えています。私たちにはケアマネさん側の事情までは分かりませんし、単純な行き違いかもしれません。利用者さん側の勘違いということもあるでしょう。
そして何より、これはケアマネさんだけの話ではありません。
私にもあります。
私自身、できるだけ皆さんに良い対応をしたいと思っています。利用者さんにも、ご家族にも、病院にも、施設にも、ケアマネさんにも、そして一緒に働いているスタッフにも、できる限りきちんと対応したいと思っています。
それでも現実の仕事では、こちらを立てれば、あちらが立たないということが日頃からあります。
一人の利用者さんの希望を優先すれば、その時間に別の方の予約を受けられなくなることがあります。急な依頼に何とか対応しようとすれば、すでに予約をいただいている方に影響が出る可能性があります。利用者さんの希望、ご家族の希望、病院側の都合、現場スタッフの安全、会社として守らなければならないルール。そのすべてを100%満たせる答えがないこともあります。
経営者として判断したことが、ある人から見れば「よく対応してくれた」になり、別の人から見れば「どうして対応してくれなかったのか」になることだってあります。
だから私は、利用者さんからケアマネさんについて何か不満を聞いたとしても、その話だけで判断することはできないと思っています。
支援の仕事は、誰か一人だけを見ていればいい仕事ではないからです。
いろいろな人の事情を考えながら、その中でできるだけ良いところを探していく。私たち介護タクシーも、ケアマネさんも、おそらく同じ難しさの中で仕事をしているのではないでしょうか。
そのうえで、10万件以上の搬送を通じて感じていることがあります。
利用者さんは、必ずしも「何でも希望どおりにしてくれる人」を信頼しているわけではないということです。
できないことがあっても、「これは難しいんですが、こちらならできるかもしれません」と一緒に考えてくれた。すぐに答えが出なくても、「確認してみますね」と言って、その後きちんと連絡をくれた。以前話したことについて「その後どうですか?」と聞いてくれた。
そんな小さなことを、利用者さんは意外とよく覚えています。
何十人もの利用者さんを担当していれば、すべての話を頭の中に覚えておくことなんてできません。大切なのは記憶力ではなく、「あなたの話をちゃんと受け取っています」ということが相手に伝わることなのだと思います。
これは私自身も気をつけなければいけないことです。
20年以上介護タクシーをやっていますが、今でも分からないことはたくさんあります。その場ですぐに答えられないこともあります。そんなときは「確認してみます」でいいと思っています。ただし、その後どうなったのかを伝える。答えがまだ出ていなくても「今確認しています」と伝える。それだけでも相手の不安はかなり違います。
また、できないことを「できない」と伝えることも必要です。ただ、「できません」で終わるのではなく、「自分たちでは難しいけれど、別の方法はないだろうか」と考える。自分で分からなければ詳しい人に聞く。自分たちで対応できなければ、できる人につなぐ。
私は、何でも自分で解決できることより、「困ったときに誰に相談すればいいかを知っていること」の方が、現場では大切な場合もあると思っています。
利用者さんから信頼されているケアマネさんについて聞く言葉も、実はとてもシンプルです。
「すぐ連絡してくれる」「ちゃんと話を聞いてくれる」「困ったときに動いてくれる」「前に話したことを覚えてくれている」「何かあったら相談できる」。
専門知識があることはもちろん大切です。しかし、利用者さんが感じている信頼は、専門知識だけではなく、こうした小さなコミュニケーションの積み重ねによってつくられているのかもしれません。
そしてこれは、ケアマネさんだけの話ではありません。介護タクシーも、ヘルパーさんも、看護師さんも、病院のスタッフさんも同じだと思います。
私自身も「皆さんにできるだけ良い対応をしたい」と思いながら、毎日のように「こちらを立てれば、あちらが立たない」という判断をしています。きっと私たちの対応に満足してくださった方もいれば、「もう少しこうしてほしかった」と感じた方もいるでしょう。
だからこそ、完璧を目指すというより、「この人に話しておけば、ちゃんと次につながる」と思ってもらえる人でありたい。
10万件以上の搬送をしてきた今、私はそんなふうに思っています。
そして、ケアマネさんが普段どんなことを意識して利用者さんと接しているのか、私も知りたいと思っています。
皆さんには、利用者さんとの信頼関係をつくるために「これだけは大切にしている」ということはありますか?
ぜひ教えてください。
私たち介護タクシー側も、皆さんの考え方から学ばせてもらいたいと思います。

