退院日が決まった。
ご家族との調整も済んだ。
退院後の受け入れ先も決まった。
「これでひと安心ですね」
……と思ったところで、一本の電話。
「すみません、そういえば自宅の玄関に階段があるんですけど、大丈夫でしょうか?」
ああ、そうでしたか。
しかも、階段は結構急だったりする。
退院支援に関わる皆さんなら、こんな経験はありませんか?
私たちは普段、介護タクシーや移動支援の立場から退院・転院に関わっています。
その中で感じるのは、ソーシャルワーカーさんの仕事は、私たちが想像する以上に調整することが多いのではないかということです。
今日は、そんな退院支援の現場について、少しお話ししたいと思います。
「退院が決まりました」で終わらない仕事
退院支援というと、病院から次の生活の場へ移るための準備というイメージがあります。
もちろん、その通りなのですが、実際には多くの人との調整が必要になります。
患者さんご本人の希望。
ご家族の事情。
医師や看護師との情報共有。
ケアマネジャーや施設との連携。
そして、退院当日の移動手段。
それぞれの立場に、それぞれの事情があります。
例えば、ご本人は「早く家に帰りたい」と希望されていても、ご家族は「本当に家で生活できるのだろうか」と不安を抱えているかもしれません。
病院としては退院の準備が整っていても、在宅サービスの調整にはもう少し時間が必要な場合もあるでしょう。
誰か一人の希望だけで決められることではありません。
そんな中で、一つひとつの条件を確認し、関係者と調整を重ねていく。
外から見ている私たちには、そのすべてが見えているわけではありません。
それでも、退院当日の搬送に関わる中で、その準備の大変さを感じることがあります。
私たちが現場で感じる、ソーシャルワーカーさんのすごさ
介護タクシーの仕事をしていると、退院当日の搬送依頼をいただくことがあります。
「車いすでの移動をお願いします」
「ストレッチャーが必要です」
「ご自宅に階段があります」
こうした情報を伺いながら、車両や介助体制を検討します。
私たちにとっては、搬送に必要な条件を確認する仕事です。
しかし、ふと考えることがあります。
この搬送の依頼にたどり着くまでに、いったい何人の方と調整されてきたのだろう。
ご家族に連絡し、退院先を確認し、必要なサービスを調整し、ようやく搬送の手配まで進んできたのかもしれません。
そして、搬送を手配した後にも、別の調整が待っていることがあります。
ソーシャルワーカーさんの仕事は、表からは見えにくい部分にこそ、大きな役割があるように感じています。
最後の数メートルが、意外と難しい
退院時の移動で、私たちが特に気にしていることがあります。
それは、車両で目的地まで到着した後のことです。
例えば、自宅の前までは問題なく到着できても、玄関に階段がある。
玄関を通過できても、廊下が狭くて車いすが入れない。
ベッドまで移動するには、追加の介助が必要になる。
こうしたことは、実際の住環境や身体状況によって対応が大きく変わります。
搬送を担当する私たちも、事前に確認できていないと困ってしまうことがあります。
ただ、これは誰か一人が悪いという話ではありません。
病院側で把握できる情報にも限界がありますし、ご家族にとっては普段から見慣れている階段が、移動の大きな障害になるとは思わないこともあります。
だからこそ、事前の情報共有が大切なのだと思います。
そして私たち搬送事業者も、単に「階段はありますか?」と聞くだけではなく、必要な情報を具体的に確認する努力が必要です。
「それ、先に言ってくださいよ」と思う前に
移動支援の仕事をしていると、予定外の状況に出会うことがあります。
事前に伺っていた内容と、現場の状況が違う。
必要な介助人数が足りない。
想定していた機材では対応が難しい。
そんなとき、つい「先に分かっていれば……」と思ってしまうこともあります。
でも、少し考えると、ソーシャルワーカーさんも同じように感じているかもしれません。
「それ、もう少し早く教えてほしかった……」
お互いに、必要な情報が最初からすべてそろっているわけではありません。
だからこそ、問題が起きたときに責任の所在を探すよりも、次に同じことで困らないように情報を共有できる関係でありたいと思っています。
困ったときに相談しやすい関係は、何も困っていないときから始まる。
これは、私たちが大切にしたい考え方です。
何かあったときだけではなく、普段から話せる関係に
退院支援の現場では、急な相談が必要になることもあります。
階段介助のスタッフが必要になった。
搬送機材を追加で手配したい。
看護師の付き添いについて相談したい。
そんなとき、普段から顔を知っている相手であれば、少し相談しやすくなるのではないでしょうか。
もちろん、相談したからといって、必ず対応できるとは限りません。
患者さんの安全や必要な体制を確認することが前提です。
それでも、日頃からお互いの仕事内容や得意分野を知っていれば、選択肢が広がることはあると思います。
移動サポートネットワーク(ISN)も、そんな関係づくりを大切にしたいと考えています。
私たちが目指しているのは、単に仕事を紹介し合うことではありません。
困ったときに「あの人に聞いてみよう」と思い浮かべてもらえる関係です。
ソーシャルワーカーの皆さんに、聞いてみたいことがあります
私たちは移動支援の立場から、退院・転院の現場を見ています。
でも、ソーシャルワーカーさんが日々どのようなことに苦労されているのか、そのすべてを知っているわけではありません。
だからこそ、皆さんの声を聞いてみたいと思っています。
退院支援の中で、移動に関する調整が大変だったことはありませんか?
「こういう情報を事前に教えてもらえると助かる」
「こういうサービスがあったら、もっと調整しやすい」
そんなご意見があれば、ぜひ教えていただきたいです。
私たち搬送事業者にも、まだまだ改善できることがあるはずです。
病院の皆さんと、移動を支える私たち。
立場は違っても、患者さんに安心して次の場所へ移っていただきたいという思いは同じだと思います。
お互いの仕事を少しずつ理解しながら、気軽に話せる関係を増やしていけたらうれしいです。
これからも、退院・転院の現場で感じたことを、このサイトで共有していきたいと思います。
皆さんの現場のお話も、ぜひ聞かせてください。
移動サポートネットワーク(ISN)
移動に関わる事業者同士の連携を通じて、階段介助・看護師付き添い・搬送機材の貸出回収など、移動に伴う支援の充実を目指しています。
公式サイト:https://isn.miyazakitaxi.com

