警察から連絡が⁉︎独居高齢者の通院支援で介護タクシー事業者が考えておきたいこと

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「依頼されたから対応する」だけで終わらせないために

独居高齢者の通院では、介護タクシー事業者が単に自宅と病院の移動を支援するだけではなく、利用者の状態を必要な範囲で把握し、気づいたことを記録し、関係者へ報告・確認することが重要だと考えています。

私自身、そのことを強く意識するきっかけになった経験があります。

以前、独居の方の通院を担当しました。いつものようにご自宅へ迎えに行き、病院への通院をお手伝いし、診察後にご自宅までお送りしました。通院終了後には、依頼者であるケアマネジャーへ、その日の状況を報告しています。

それから約1週間後、警察から弊社へ連絡がありました。その方がご自宅で亡くなっているのが発見され、亡くなられたのは私たちが通院をお手伝いした翌日頃とみられているとのことでした。

警察からは、通院した日時、行き先、その日の様子、帰宅時間、帰宅時の状態などについて確認があり、私たちは当時の記録をもとに、分かる範囲で状況を説明しました。

この経験から感じたのは、独居の方の場合、介護タクシー事業者がその方と最後に接した人の一人になる可能性があるということです。

もちろん、帰宅後の生活すべてについて介護タクシー事業者が責任を負うわけではありません。しかし、自分たちが関わった時間について、いつ、どこへ行き、どのような様子だったのかを記録し、必要な相手へ報告しておくことはできます。

特別な異常がなくても、「通院を終え、○時頃に無事帰宅されました」という報告には意味があります。いつもと様子が違う、歩行状態が悪い、会話の反応が普段と違う、体調について本人から気になる訴えがあったといった場合には、その事実をケアマネジャーなどへ共有することも大切です。

介護タクシー事業者が診断をする必要はありません。しかし、現場で気づいた情報を必要な人へつなぐことはできます。

介護タクシーからの報告は、ケアマネジャーにとっても情報になる

利用者の様子をケアマネジャーへ報告することは、介護タクシー事業者側の記録やリスク管理だけを目的としたものではありません。ケアマネジャーにとっても、利用者の現在の状態を知るための大切な情報になります。

ケアマネジャーは利用者の生活全体を支える立場ですが、毎日利用者と接しているわけではありません。定期的に訪問していても、その訪問時だけでは分からない変化があります。

一方、介護タクシー事業者は通院の際に、自宅から外へ出るところ、車両への乗降、移動中の会話、病院での移動、そして帰宅するところまで利用者と接することがあります。

そのため、「以前より歩く速度が遅くなった」「車いすへの移乗に時間がかかるようになった」「同じ話を何度もされるようになった」「行き先について混乱することが増えた」「以前より疲れやすそうだった」など、普段の生活状況の変化が見えることがあります。

一つひとつは小さな変化かもしれません。しかし、ケアマネジャーにとっては、その情報がケアプランやサービス内容、家族への確認、他職種との連携を考える材料になることがあります。

だからこそ、介護タクシー事業者からケアマネジャーへの報告は、単なる「送迎完了の連絡」ではなく、地域で利用者を見守るための情報共有の一つとして考えることができます。

もちろん、介護タクシー事業者が利用者を評価したり、専門外の判断をしたりする必要はありません。

「以前と比べてこう見えた」「本人からこのような話があった」「今日はこのような様子だった」と、実際に確認した事実を伝えるだけでも十分です。

ケアマネジャーから介護タクシー事業者へ情報をいただくだけではなく、介護タクシー事業者からも現場で得た情報を返していく。

こうした双方向の情報共有ができる関係をつくることも、地域連携の一つだと考えています。

一人で通院できる方でも、状況の把握は必要

独居で認知機能に低下があるものの、一人で何とか通院できている方を担当することもあります。

以前、そのような利用者から「明日、秋田県へ行きたいので来てほしい」と依頼を受けたことがありました。

理由を伺うと、昔自分が経営していた病院と薬品工場へ行きたいとのことでした。しかし、伺った名称を確認しても、その病院や薬品工場の存在を確認することができませんでした。

普段の状態を知らず、「秋田県まで行きたい」という依頼だけを聞けば、単純な長距離利用として予約を受けてしまう可能性があります。

しかし、その方の認知機能の状態や生活背景を把握していれば、「この依頼をそのまま受けてよいのか」と一度確認することができます。

本人の話を否定したり、介護タクシー事業者が認知症の症状を判断したりする必要はありません。依頼内容に不自然な点があれば、必要に応じてケアマネジャーや家族などへ確認することが重要です。

「自分で電話ができる」「一人で乗車できる」ということと、すべての依頼内容について本人だけで判断できるということは必ずしも同じではありません。

そのため、病名だけではなく、安全な移動支援に必要な範囲で、その方の普段の状態、認知機能、移動方法、緊急時の連絡先、支援に関わる人などを把握しておくことが大切です。

ケアマネからの依頼だから大丈夫、ではない

介護タクシーでは、ケアマネジャー、医療機関、施設、家族、本人など、さまざまな方から依頼を受けます。

ここで注意したいのが、「ケアマネから依頼されたのだから、必要な確認はすべて済んでいるだろう」という考え方です。

ケアマネジャーとの連携は非常に重要ですが、依頼者を信頼することと、事業者自身が確認しなくてよいことは別です。

実際に依頼を請け負い、利用者と接し、サービスを提供するのは介護タクシー事業者です。

問題が起きたときに、「ケアマネから聞いていませんでした」「本人からそう言われました」という説明だけではなく、自分たちとして必要な確認を行っていたかが重要になると考えています。

分からないことは確認する。自分たちでは判断できないことは、判断できる関係者へつなぐ。

ケアマネジャーに任せきりにするのではなく、介護タクシー事業者自身も一つの専門事業者として行動する姿勢が必要です。

生活保護の通院では、移送費の範囲にも注意する

生活保護を利用している方の通院では、一定の要件のもとで移送費が認められる場合があります。

しかし、通院に関連する移動であれば、すべてが公費の対象になるとは限りません。

たとえば、病院からの帰りに「スーパーへ寄りたい」「商業施設で買い物をしてから帰りたい」と希望されることがあります。

利用者にとっては自然な希望ですが、通院に必要な移動と、買い物など私的な目的の移動は分けて考える必要があります。

介護タクシー事業者としても、「通院以外の立ち寄りについては、公費の対象にならない場合があります」と説明し、判断に迷う場合には担当ケースワーカーへ確認することが大切です。

また、通院先についても、どの医療機関への移動でも必ず移送費の対象になるとは限りません。受診の必要性や制度上の条件などによって個別確認が必要になることがあります。

この場合も、「ケアマネから依頼された病院だから大丈夫」と決めつけるのではなく、必要に応じてケースワーカーや福祉事務所へ確認します。

制度上の判断を介護タクシー事業者が行う必要はありません。重要なのは、分からないことを曖昧なまま進めないことです。

「記憶」ではなく「記録」を残す

独居の方の支援では、記録も非常に重要です。

介護タクシー事業者は日々多くの利用者と接しています。数日後や一週間後に「あの日の様子を教えてください」と尋ねられても、記憶だけでは正確に答えられない可能性があります。

そのため、利用日時、乗車場所と目的地、到着・帰宅時間、利用者の様子、支援中に起きたこと、誰へ何を報告したのかなど、必要な情報を残しておくことが重要です。

記録は、何か問題が起きたときに事業者を守るためだけのものではありません。利用者の状態を関係者へつなぎ、その後の支援に役立てるための情報でもあります。

介護タクシーは地域の連携の一員

独居高齢者が増えていけば、介護タクシー事業者が地域のなかで果たす役割もますます重要になります。

もちろん、介護タクシー事業者がケアマネジャーやケースワーカー、医療職の役割まで担うわけではありません。

それぞれに専門性があります。

だからこそ、介護タクシー事業者は安全な移動を支援し、その過程で気づいたことを記録し、必要な相手へ報告する。分からないことがあれば、適切な専門職へ確認する。

そして、ケアマネジャーなどから情報を受け取るだけではなく、実際の移動支援のなかで見えた利用者の変化を関係者へ返していくことも大切です。

「依頼されたから対応する」で終わるのではなく、依頼を請け負った事業者として、自分たちが確認すべきことは何か、そして自分たちが持っている情報のなかに関係者へ共有すべきものはないかを考える。

利用者を守るためにも、依頼者を守るためにも、そして自分たちの事業を守るためにも、これからの介護タクシー事業者には、移動を支援するだけではなく、人と人、情報と情報、支援と支援をつなぐ視点が必要になっていくのではないでしょうか。

移動サポートネットワーク(ISN)は、介護タクシーを地域の医療・介護・福祉をつなぐ存在の一つとして捉え、こうした双方向の連携を広げていきたいと考えています。

※生活保護制度における移送費の取扱いは、利用者の状況や受診内容等によって個別の確認が必要になる場合があります。実際の運用については、担当ケースワーカーや福祉事務所等へ確認してください。

※認知機能や健康状態に関する判断は介護タクシー事業者が診断するものではありません。安全な移動支援に必要な範囲で情報を把握し、判断に迷う場合には関係する専門職へ確認することが重要です。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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