冠婚葬祭の移動|福祉車両レンタカーと介護タクシー1日貸切を比較

結婚式、法事、お墓参り、親族の集まり。

高齢の家族や車いすを利用している家族と一緒に参加するとき、

「福祉車両のハイエースやキャラバンをレンタルした方が安いのでは?」

と考える方もいると思います。

実際、車いすのまま乗車できるハイエースやキャラバンはレンタルできます。

そして、介護タクシーで使用されているハイエースやキャラバンも、基本的には同じような福祉車両です。

では、

福祉車両を1日レンタルする場合と、介護タクシーを1日貸切にする場合では何が違うのでしょうか。

今回は料金だけでなく、運転、車いすの固定、シートベルト、福祉車両の操作、介助、駐車場、万が一の対応まで含めて比較します。


目次

まずは料金を比較

ハイエースやキャラバンの大型福祉車両は、レンタカー会社、地域、車両によって料金が異なりますが、1日2〜3万円前後で借りられるケースがあります。

これに、

・免責補償など
・ガソリン代
・高速道路料金
・駐車場料金

などが加わります。

一方、介護タクシーを冠婚葬祭などで1日貸切にして、

50,000〜60,000円程度

だったとします。

例えば、

福祉車両レンタカー 25,000円程度
介護タクシー貸切  55,000円程度

なら、約30,000円の差があります。

料金だけを比較すれば、福祉車両レンタカーの方が安くなります。

ただし、この2つは同じサービスではありません。


実は車両そのものは同じ

介護タクシーだから、レンタカーにはない特別なハイエースやキャラバンを使用しているわけではありません。

大型の福祉車両には、

・車いす用リフト
・車いす固定装置
・車いす乗車スペース
・乗員用シートベルト

などが装備されています。

同じような車両を福祉車両レンタカーとして借りることもできます。

大きな違いは車ではなく、

「福祉車両を借りる」のか、「その車両を扱う人も含めて移動を任せる」のか。

ということです。


福祉車両レンタカーでは家族が移動を担う

福祉車両をレンタルした場合、

車を借りる
↓
家族が運転する
↓
車いす利用者を乗車させる
↓
リフトを操作する
↓
車いすを固定する
↓
シートベルトを装着する
↓
会場まで運転する
↓
駐車場を探す
↓
帰りも運転する
↓
給油して車両を返却する

という一連の作業を基本的には家族が行います。

家族の中に福祉車両の扱いや車いす介助に慣れている人がいるのであれば、非常に合理的な方法です。

費用を抑えられるという大きなメリットもあります。

一方、初めて福祉車両を利用する場合には、料金以外にも知っておきたいことがあります。


「装置を操作できる」と「安全に移送できる」は違う

福祉車両を借りる際には、リフトや固定装置などの基本的な操作方法について説明を受けられる場合があります。

説明を受ければ、

「リフトを上げる」

「リフトを下げる」

「固定装置を操作する」

といった基本操作はできるようになるかもしれません。

しかし、

装置を操作できることと、車いす利用者を安全に移送できることは同じではありません。

特に重要なのが、車いすの固定です。


車いすは「固定すればいい」わけではない

車いすにもさまざまな種類や形状があります。

慣れていないと、

・固定する位置が適切ではない
・車いすが斜めになっている
・固定したつもりでも十分に固定されていない
・車いすに不自然な力がかかっている
・固定後も車いすが動いてしまう
・利用者の姿勢が崩れている

といった状態になることがあります。

見た目では固定されているように見えても、それだけで安全とは限りません。

「固定装置を取り付けたこと」と「安全に固定できたこと」には違いがあります。


シートベルトも「着ければいい」わけではない

もう一つ重要なのが、利用者自身のシートベルトです。

車いすを車両に固定することと、車いすに乗っている人を守ることは別です。

車いすを適切に固定したうえで、利用者自身にも乗員用シートベルトを適切に装着することが重要です。

そして、シートベルトは単にバックルを接続すればよいわけではありません。

どの位置にベルトを通すのか。

利用者の身体にどのようにベルトがかかっているのか。

車いすの部品に干渉していないか。

利用者の姿勢は適切か。

こうした確認も必要になります。


貸出時の説明と「安全な移送の知識」は別

レンタカーの貸出時には、リフトや固定装置などの基本操作について説明を受けられる場合があります。

しかし、車いすにはさまざまな形状があり、利用する方の体格や座位姿勢も一人ひとり違います。

そのため、

「この車いすはどこを固定すればよいのか」

「この方の場合、シートベルトをどの位置に通すのが適切なのか」

といった、実際の利用者に合わせた安全な移送方法まで詳しくレクチャーを受けられるとは限りません。

また、貸出事業者が福祉車両の基本操作を把握していても、日常的に車いす利用者の介助や移送を行っているとは限りません。

利用者ごとの固定方法や姿勢、シートベルトの位置については、判断が難しい場合もあるでしょう。

これは貸出事業者の問題ということではありません。

「福祉車両を貸し出すこと」と「人を安全に移送すること」では、必要とされる知識や経験が違うからです。


装置の故障やエラーに気づけるか

福祉車両のリフトや固定装置は機械です。

当然、いつでも絶対に正常に動くとは限りません。

操作中に、

「いつもと違う動きをする」

「警告やエラーが出る」

「途中で動かなくなる」

「いつもの位置まで動かない」

といったことが起きる可能性もあります。

問題は、初めて使う人の場合、

「これが正常な動作なのか、異常なのか分からない」

ことがある点です。

日常的に同じ福祉車両を使用している人であれば、

「いつもと音が違う」

「動きがおかしい」

「この表示は通常とは違う」

など、普段との違いに気づきやすくなります。

もちろん介護タクシーであっても、機械の故障そのものを完全に防ぐことはできません。

違うのは、

日常的に使用しているからこそ、異常に気づきやすいという経験値です。


車いす送迎中の重大事故も報告されている

車いすでの移送では、実際に重大な事故も発生しています。

消費者安全調査委員会の調査では、2019〜2025年の7年間に、車いす利用者を車いすに乗せたまま自動車で送迎中に発生した事故が49件確認され、そのうち30件が死亡事故でした。

事故の中には、車いすの固定やシートベルトの装着が適切でなかったケースも確認されています。

これは「福祉車両レンタカーが危険」という意味ではありません。

車いすで安全に移動するためには、装置の操作だけではなく、固定・シートベルト・姿勢・安全確認まで含めた知識と経験が重要だということです。


介護タクシーは日常的に福祉車両を扱っている

介護タクシーの乗務員は、日常的に福祉車両を使用している事業者であれば、

車いすを乗車させる
↓
適切な位置へ誘導する
↓
車いすを固定する
↓
固定状態を確認する
↓
シートベルトを装着する
↓
利用者の姿勢を確認する
↓
安全を確認して出発する

という作業を繰り返しています。

つまり、

「使い方を知っている」のではなく、「日常的に扱っている」

という違いがあります。

同じハイエース、同じキャラバンでも、ここには経験の差があります。


車いすなどの機材も相談できる

介護タクシー事業者では、車両だけでなく、

・標準型車いす
・リクライニング車いす
・ストレッチャー
・乗降や移乗を補助する機材

などを用意している場合があります。

例えば、朝は普通の車いすで問題なかった方でも、長時間の結婚式や法事で疲れてしまい、帰りには姿勢を保つことが難しくなることがあります。

そんなとき、

「この状態でどうやって帰ればいいだろう」

と相談できる人がいる。

これも介護タクシーを利用するメリットの一つです。

※保有機材や対応できる内容は事業者によって異なります。


現地に階段があったら?

冠婚葬祭では、現地へ行って初めて分かることもあります。

「車いす対応だと思っていたら入口に段差があった」

「別会場へ移動したら階段があった」

「車いすのままでは通れない場所があった」

こうした場合、福祉車両レンタカーなら基本的には家族で対応することになります。

介護タクシーの場合、車いす介助や階段介助などの経験を持つ事業者であれば、利用者の状態や現場を確認しながら、

「どうすれば安全に移動できるか」

を一緒に考えることができます。

もちろん、すべての階段に対応できるわけではありません。

階段の形状、利用者の状態、必要な人数などによっては対応できない場合もあります。

それでも、

予定外のことが起きたときに、現場で相談できる人がいる。

これは大きな違いです。


万が一の体調変化にも備える

高齢者との長時間の外出では、途中で体調が変化する可能性もあります。

介護タクシーは救急車ではありません。

また、乗務員が医療行為を行えるわけでもありません。

一方で事業者によっては、乗務員が救命講習などを受け、体調変化が起きた際の観察、119番通報、必要な救命処置、救急隊への引き継ぎなどに備えています。

これは、

「介護タクシーなら何が起きても対応できる」

という意味ではありません。

異変が起きたときに、必要な対応につなげるための知識や経験を持つ人が一緒にいる。

高齢の家族との外出では、これも一つの安心材料になります。


大型福祉車両は「高さ約2.3m」にも注意

ハイエースやキャラバンの大型福祉車両には、仕様によって車高が約2.3mになる車両があります。

そこで問題になるのが、

立体駐車場や地下駐車場です。

結婚式場やホテルの駐車場が高さ2.0mや2.1mまでなら、大型福祉車両が入れないことがあります。


レンタカーでは離れた駐車場を探すことも

福祉車両レンタカーの場合、

会場前で家族を降ろす
↓
運転者が駐車場を探す
↓
大型車が入れる平面駐車場へ移動する
↓
車を停める
↓
運転者だけ歩いて会場へ戻る

ということも考えられます。

帰るときには、また運転者が駐車場まで車を取りに行きます。

介護タクシーなら、会場の乗降可能な場所で利用者と家族を降ろし、車両の移動は乗務員に任せられます。

利用内容によっては、行事の終了時間に合わせて再び迎えに来てもらうこともできます。

家族は駐車場を探すのではなく、その日の行事に参加できます。


家族の誰かを「運転手」にしなくていい

冠婚葬祭では、これも大きな違いです。

レンタカーなら、家族の誰かが一日、

運転する。

駐車場を探す。

帰りも運転する。

車を返却する。

という役割を担当します。

結婚式や法事なら、その人は帰りの運転のことも考えながら参加することになります。

介護タクシーを貸切にすれば、運転は乗務員に任せられます。

家族全員が「運転手」ではなく「家族」として、その一日に参加できます。


では、約3万円の差をどう考える?

仮に、

福祉車両レンタカー 25,000円程度

介護タクシー貸切  55,000円程度

なら、差額は約30,000円です。

もちろん介護タクシーの方が高くなります。

しかし、その差額には、

・運転
・福祉車両の操作
・車いすの安全な固定
・シートベルトの確認
・利用者の姿勢確認
・乗降時の介助
・必要な機材への対応
・装置の異常への気づき
・階段など予定外の状況への対応・相談
・体調変化が起きた場合の初期対応
・大型車の駐車場所を探す負担の軽減
・家族全員が行事に参加できる環境

といった「人による対応」が含まれてきます。

ですから比較するものは、

25,000円のハイエースと55,000円のハイエースではありません。

車両自体は同じようなものです。

比較するのは、

「福祉車両を借りて、自分たちで一日の移動を行う」

のか、

「福祉車両と、それを扱う人を含めて一日の移動を任せる」

のか。

という違いです。


福祉車両レンタカーが向いているケース

家族の中に、

・大型車の運転に慣れている人がいる
・福祉車両の操作経験がある
・車いすの固定方法を理解している
・シートベルトの適切な装着について理解している
・車いす介助に慣れている
・費用をできるだけ抑えたい

という場合には、福祉車両レンタカーは非常に合理的な選択です。


介護タクシー貸切が向いているケース

一方、

・初めて福祉車両を利用する
・車いすの固定に不安がある
・シートベルトの装着に不安がある
・大型車の運転に不安がある
・高齢の家族の体調が心配
・現地での介助に不安がある
・予定外の状況が起きたときが心配
・家族全員で行事に参加したい
・誰か一人を運転係にしたくない

という場合には、介護タクシーの1日貸切を検討する価値があります。


まとめ|「車を借りる」のか「一日の移動を任せる」のか

福祉車両レンタカーと介護タクシー。

使われているハイエースやキャラバンという車両自体には、大きな違いがない場合があります。

違うのは、

誰がその車を扱い、誰がその人の移動を支えるのか。

ということです。

福祉車両レンタカーは、

「福祉車両を借りて、自分たちで移動する」

という選択です。

介護タクシーの貸切は、

「福祉車両だけでなく、運転・介助・安全確認・現場対応まで含めて一日の移動を任せる」

という選択です。

料金だけなら、レンタカーの方が安くなるケースが多いでしょう。

福祉車両や車いすの扱いに慣れている家族であれば、レンタカーは十分に選択肢になります。

しかし冠婚葬祭は、家族にとって大切な一日です。

結婚式。

法事。

お墓参り。

親族の集まり。

高齢になった親や車いすを利用している家族も一緒に、

「今日はみんなで行こう」

を実現する。

そのための選択肢の一つとして、介護タクシーの1日貸切があります。

安いか、高いかだけではなく、その日を家族全員でどう過ごしたいのか。

そこまで含めて移動方法を選んでみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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