介護タクシーを予約するとき、
「車いすなんですが、お願いできますか?」
と伝えることがあると思います。
もちろん、これでもお問い合わせはできます。
しかし実際に安全な移動方法や必要な車両を考えるためには、もう少し情報が必要になることがあります。
なぜなら、一口に「車いす」といっても、種類も大きさも重量も違えば、利用される方の身体の状態も違うからです。
「車いす」といっても種類はさまざま
車いすには、
・一般的な車いす
・リクライニング車いす
・ティルト式車いす
・電動車いす
・外出用電動車いす
など、さまざまな種類があります。
さらに、同じ車いすを使用していても、利用される方の身体状況は一人ひとり違います。
短時間なら座っていられる方もいれば、長時間同じ姿勢を保つことが難しい方もいます。
そのため介護タクシーでは、
「何に乗っているか」だけではなく、「どのような状態で移動するのか」
まで確認することが大切です。
普通の車いすで大丈夫?
普段から一般的な車いすを使用し、座った姿勢を安定して保つことができる方であれば、そのまま車いすで乗車できる車両が選択肢になります。
ただし、ここで確認したいのが移動時間だけではありません。
その方が自分で座った姿勢を保てるかどうかも重要です。
座位を安定して保つことが難しい方の場合、車いすを押して移動している間に身体が前方へずれて、ずり落ちてしまう危険があります。
また、頭や首を自分で安定して保つことが難しく、移動しているうちに頭が後ろへ倒れていってしまう方もいます。
「車いすに座ることができたから大丈夫」とは限りません。
実際に移動したときに、安定した姿勢を保つことができるかまで考える必要があります。
こんな場合はリクライニング車いすも検討してください
たとえば、
・普通の車いすでは座位を安定して保つことが難しい
・移動していると身体が前方へずれてくる
・ずり落ちる危険がある
・頭や首を自分で安定して保つことが難しい
・頭が後ろへ倒れていってしまう
・長時間、普通の車いすに座っていることが難しい
このような場合には、リクライニング車いすの利用を検討してください。
リクライニング車いすは背もたれの角度を調整できるため、普通の車いすとは異なる姿勢で移動することができます。
ただし、リクライニング車いすを使用すればすべて解決するわけではありません。
身体状況によっては、ストレッチャーを使用して寝た状態で移動する方法を検討した方がよい場合もあります。
どちらが適しているか分からない場合には、ご家族だけで判断せず、介護タクシー事業者や医療・介護の関係者に相談してください。
移動時間も重要です
自宅から近くの病院まで10分程度なのか。
転院などで1時間、2時間と移動するのか。
普段は問題なく普通の車いすを使用している方でも、長時間の移動となれば身体への負担は変わります。
そのため、
「普段使っている車いすだから大丈夫」
だけではなく、
「この姿勢で目的地まで安全に移動できるか」
という視点で考えることが大切です。
外出用の電動車いすやセニアカーは特に事前確認が必要
外出用の大型電動車いすや、いわゆるセニアカーなどは、一般的な手動車いすと比べて重量があり、サイズや形状も大きく異なります。
「電動車いすだから、そのまま介護タクシーに乗せられる」
とは限りません。
車両に装備されているリフトやスロープには、それぞれメーカーが定めた耐荷重があります。
また、確認するのは車いす本体の重量だけではありません。
車いす本体+利用される方+必要に応じて介助者や荷物などを含めた重量
を確認する必要があります。
耐荷重の範囲内であったとしても、機器に大きな負荷をかける使用を繰り返せば、故障やトラブルにつながる可能性も考えなければなりません。
そのため、「耐荷重以内だから大丈夫」と数字だけで判断するのではなく、車いすの重量、サイズ、形状、乗降方法などを確認することが大切です。
スロープなら大丈夫、でもありません
「重い電動車いすならスロープで乗せればいいのでは?」
と思われるかもしれません。
しかし、スロープにも耐荷重があります。
さらに重要なのが乗降時の安全です。
重量のある電動車いすが傾斜したスロープを移動するため、操作を誤ったり、車いすを適切に保持できなかったりすれば、後退や転倒、スロープからの逸脱など重大な事故につながる可能性があります。
つまり、
「リフトが難しいならスロープにすればいい」
という単純な問題ではありません。
重量のある電動車いすほど、車両と機材が対応しているか、そして安全に乗降できる方法が確保できるかを事前に確認することが重要です。
予約時に写真を送るのも一つの方法
電動車いすやセニアカーをご利用の場合、
「電動車いすです」
だけでは、事業者側も判断できないことがあります。
できれば、
・メーカー
・製品名や型式
・車いす本体の重量
・利用者を含めたおおよその重量
・全長、全幅、高さ
・普段どのように乗り降りしているか
などを伝えてください。
分からない場合には、車いす全体が分かる写真や型式表示の写真を事業者へ送る方法もあります。
事前に確認できれば、「当日行ってみたら乗せられなかった」というトラブルを防ぎやすくなります。
車いすが車に入ればいい、ではありません
介護タクシーでは、
「車いすが車内に入ったから大丈夫」ではありません。
安全に乗降できること。
利用される方が安全な姿勢を保てること。
車内の必要なスペースが確保できること。
そして走行中に適切に固定できること。
ここまで確認して、初めて安全な移動につながります。
予約するときは何を伝えればいい?
難しく考える必要はありません。
まず、
「介護タクシーを利用したいのですが、この車いすのまま乗れるか分かりません」
と相談してください。
その際には、車いすの種類だけでなく、
「普通の車いすで座位を保てるか」
「身体がずり落ちてこないか」
「頭や首を自分で安定して保てるか」
といった身体の状態も伝えてください。
出発地と目的地、階段や段差の有無、移動時間、同乗人数なども、分かる範囲で伝えていけば大丈夫です。
「どの車を頼むか」より「どう安全に移動するか」
介護タクシーを利用するとき、ご家族だけで車両や機材を決める必要はありません。
大切なのは、
「この方が、この車いすを使用した状態で、安全に移動するにはどのような方法がよいでしょうか?」
と相談することです。
介護タクシーは、単に車いすを車に積んで目的地まで走るだけではありません。
玄関から車までどう移動するのか。
どの機材を使うのか。
どの車両なら安全に乗降できるのか。
利用される方が安全な姿勢を保てるのか。
車内でどのように固定するのか。
目的地ではどこまで介助が必要なのか。
こうした一つひとつを確認しながら、移動全体を組み立てていきます。
だからこそ、予約するときには、
「車いすです」
だけではなく、
「どんな車いすを使っていて、どんな状態で移動するのか」
まで伝えてみてください。
その情報が、安全な移動方法を考えるための大切な第一歩になります。
※身体状況に適した車いすや移動方法は一人ひとり異なります。また、車両、リフト、スロープ、固定装置等の仕様や耐荷重は車種・装置によって異なります。実際の利用時には、介護タクシー事業者や医療・介護の関係者にご相談ください。

