車検だけではダメ?

目次

介護タクシーの日常点検・3か月点検・12か月点検を法律から整理

介護タクシーを運営していると、

「車検を受けているから大丈夫」

「整備工場で定期的に見てもらっている」

「毎日運転しているから、異常があれば分かる」

と思ってしまうことがあります。

しかし、介護タクシーは単なる自家用車ではありません。

福祉輸送事業限定であっても、道路運送法上は一般乗用旅客自動車運送事業です。

営業に使用する車両は事業用自動車として、安全に運行できる状態を維持する必要があります。

今回は、

日常点検はいつ、何をするのか。

3か月点検・12か月点検とは何なのか。

車検を受けていれば、それだけでいいのか。

介護タクシー事業者が「知らなかった」で違反しないために、基本を整理します。


先に結論

まず、事業者が一番知りたいところから整理します。

× 車検だけ受けていればいい

違います。

× 3か月ごとの定期点検をしなくていい

事業用自動車には定期点検が必要です。

× 毎日乗っているから日常点検をしなくていい

運転して異常を感じることと、運行前に日常点検をすることは別です。

○ 1日1回、運行開始前に日常点検をする

事業用自動車では基本となる点検です。

○ 3か月ごとの定期点検を管理する

車検とは別に管理が必要です。

つまり、

「車検を通している=介護タクシーとして必要な車両管理をすべて行っている」

ということではありません。


日常点検は「運行する前」に行う

事業用自動車の日常点検は、1日1回、その日の運行を開始する前に行います。

介護タクシーの場合で考えれば、最初のお客様を迎えに行ってから確認するのではありません。

営業運行を開始する前に、

「今日、この車で安全に利用者を運べる状態か」

を確認します。

これは大きな会社だけの話ではありません。

一人で介護タクシーを営業している場合でも、使用しているのは事業用自動車です。


日常点検では何を見る?

日常点検では代表的なものとして、

・ブレーキ
・タイヤ
・バッテリー
・原動機
・灯火装置
・方向指示器
・ウインド・ウォッシャ
・ワイパー

などを確認します。

タイヤなら、

空気圧
亀裂・損傷
異常な摩耗
溝の深さ

などがあります。

単に車の周りを一周して、

「特に問題なさそう」

で終わらせるのではなく、必要な点検項目に沿って確認することが重要です。


私自身、パンクを何度か経験しています

私自身、20年以上介護タクシー事業を続ける中で、タイヤのパンクを何度か経験しています。

パンクというと、

「突然タイヤがぺちゃんこになる」

というイメージを持つかもしれません。

しかし、実際にはそうとは限りません。

小さな釘などが刺さり、少しずつ空気が抜けていくこともあります。

これが怖いところです。

昨日は普通に走れていた。

朝も見た目では大きな異常を感じない。

しかし、空気圧は徐々に下がっている。

その状態で高速道路へ入ってしまえば、大きな事故につながる可能性があります。

介護タクシーには、高齢者や障害のある方、療養中の方などが乗車しています。

高速道路上でタイヤに重大な異常が発生すれば、一般の自家用車以上に対応が難しくなることがあります。

だからこそ、

「昨日大丈夫だったから今日も大丈夫」ではなく、その日の運行前に確認する。

日常点検には実際の意味があります。


ウインカーの球切れも始業前なら対応できる

灯火類も同じです。

ウインカーの球が切れていることに営業中に気づけば、その時点で対応しなければなりません。

しかし、始業前に発見できれば、運行を開始する前に交換できます。

私たちは予約を受けて仕事をしています。

利用者を乗せてから、

「ウインカーが切れていました」

では困ります。

交換可能な消耗部品については、予備を保管しておくと安心です。

ただし、現在の車両ではLEDユニットなど、簡単に自分で交換できないものもあります。

自分の車両について、

「自分で交換できるもの」

「整備工場で対応するもの」

を把握しておくことも大切です。


バッテリー上がりにも備える

バッテリー上がりも、介護タクシーでは注意したいトラブルの一つです。

介護タクシー車両には、車種によって電動スライドドアや福祉装置など、さまざまな電装品が搭載されています。

また、待機が多かったり、短距離運行を繰り返したりする使い方もあります。

朝一番で利用者を迎えに行こうとしたらエンジンがかからない。

病院から利用者を乗せて出発しようとしたら始動できない。

こうなれば、利用者にも影響します。

そこで、バッテリーの状態を日頃から確認するとともに、ジャンプスターターを車載しておくことをおすすめします。

もちろん、

「ジャンプスターターがあるからバッテリーを交換しなくていい」

ということではありません。

劣化したバッテリーは適切な時期に交換する。

そのうえで万一に備える。

この二段構えが安心です。


異常を見つけたら「点検したからOK」ではない

日常点検の目的は、チェック表に○を付けることではありません。

例えば、

タイヤに異常がある。

ブレーキの効きがおかしい。

ウインカーが点灯しない。

ワイパーが正常に動かない。

こうした異常を発見したのであれば、必要な整備を行います。

予約が入っているから、

「今日だけは大丈夫だろう」

とそのまま営業するための点検ではありません。

点検する。
異常を発見する。
必要な整備をする。
安全を確認してから運行する。

ここまでが重要です。


3か月ごとの定期点検も必要

日常点検とは別に、事業用自動車には定期点検があります。

介護タクシーとして使用する事業用自動車については、3か月ごとの定期点検を管理する必要があります。

自家用乗用車の感覚で、

「年に1回くらい整備工場で見てもらえばいい」

と考えないことが大切です。

日常点検と定期点検は役割が違います。

毎日の点検だけでは確認できない部分について、定期的に点検整備を行います。


12か月時には、より詳細な定期点検

事業用自動車では3か月ごとに定期点検を行い、12か月時には、より詳細な点検を行います。

イメージとしては、

3か月
↓
6か月
↓
9か月
↓
12か月

と管理していきます。

大切なのは、

「最後にいつ点検したのか分からない」という状態を作らないことです。

車両が複数台になれば、なおさら人の記憶だけでは管理できなくなります。


車検と定期点検は別

ここは特に覚えておきたいポイントです。

車検と法定定期点検は同じものではありません。

「車検を受けたから、次の車検まで点検しなくていい」

ということにはなりません。

介護タクシー事業者は、

車検満了日

だけでなく、

3か月点検
12か月点検

についても管理する必要があります。


整備工場に任せることと、管理を任せきることは違う

専門的な点検や整備を整備工場へ依頼するのは一般的です。

しかし、

「整備工場に任せているから、自分は何も知らなくていい」

ということではありません。

事業者として、

前回いつ点検したか。

次はいつなのか。

必要な点検を実施したか。

整備が必要な箇所はなかったか。

を把握しておくことが大切です。

整備そのものはプロに任せても、自分の事業用車両の管理まで丸投げしないということです。


法律を全部覚える必要はない

ここまで読むと、

「介護タクシーは覚えることが多い」

と思うかもしれません。

そこで大切なのが、ISNがこの法律講座で伝えていきたい考え方です。

法律をすべて暗記する必要はありません。

法律に基づいて必要なことを、普段の業務の中に組み込めばよいのです。

例えば毎日の点検表を用意する。

車両管理表を作る。

スマートフォンやカレンダーに次回の3か月点検日を登録する。

日報と点検確認を連動させる。

そうすれば、

「覚えていたらやる」

から、

「仕組みとして必ず確認する」

に変えることができます。


日報・点検表を法律に合わせる

例えば、始業前の確認に、

□ 日常点検実施
□ タイヤ確認
□ 灯火類確認
□ 異常なし/異常あり
□ アルコール確認
□ 健康状態確認

など、必要な項目を組み込みます。

車両管理表には、

車両番号
前回定期点検日
次回3か月点検予定日
12か月点検予定日
車検満了日

などを記録しておく。

そして点検期限が近づいたら、事前に整備工場を予約する。

こうしておけば、

「知らなかった」

「忘れていた」

「整備工場がやってくれていると思っていた」

ということを減らせます。


点検記録は監査のためだけではない

日報や点検表を、

「監査が来たときに見せる書類」

と考えると、面倒な作業になってしまいます。

しかし、本来の目的は違います。

タイヤの空気圧低下に始業前に気づく。

ウインカーの球切れを利用者を乗せる前に発見する。

バッテリーの弱りに早めに気づく。

3か月点検を忘れない。

これはすべて、事故やトラブルが起きる前に対処するためです。

介護タクシーは予約で動く仕事です。

透析、通院、退院、転院など、時間が決まっている利用者も少なくありません。

車両トラブルが起これば、利用者だけでなく、ご家族、病院、施設などにも影響します。

だから、

点検する。
記録する。
異常を早く見つける。
必要な消耗品を準備する。
万一のトラブルにも備える。

ここまでを車両管理として考えることが重要です。


「知らなかった違反」をなくす

介護タクシー事業者の多くは、法律に違反しようと思って営業しているわけではありません。

怖いのは、

「知らなかった」

「車検だけでいいと思っていた」

「他の事業者もやっていなかった」

「整備工場に任せていた」

という無意識の違反です。

だからISNの「事業者のための法律講座」では、

単に、

「これは違反です」

と指摘するだけではなく、

「どうすれば日常業務の中で違反を防げるのか」

まで考えていきます。


法律を知り、仕組みにして、安心して事業をする

日常点検をする。

必要な定期点検をする。

点検時期を管理する。

異常があれば整備する。

消耗品を準備する。

万一に備える。

そして必要な記録を残す。

一つ一つは特別難しいことではありません。

重要なのは、

「覚えている人がやる」のではなく、「忘れても漏れない仕組み」にすることです。

法律を知る目的は、事業者を怖がらせることではありません。

何をしなければならないのかを明確にする。

それを日報や点検表に落とし込む。

そして、

「必要なことをやっているから、安心して今日も営業できる」

という状態をつくる。

利用者の安全を守り、事業者自身を守り、介護タクシー事業を長く続けていくために。

日常点検を「義務だから行う作業」ではなく、安全な一日の営業を始めるための準備として考えてみてはいかがでしょうか。


※本記事は一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定を含む)の事業者に向けた一般的な情報提供を目的としています。車種、車両構造等によって必要な点検内容が異なる場合があります。実際の点検・整備については、法令、国土交通省資料、車両メーカーの整備情報、整備事業者等をご確認ください。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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