「利用者のため」が違反になることも?現場でよくある2つの事例
カテゴリー:事業者のための法律講座
介護タクシーは、人の生活を支える大切な仕事です。
しかし、その一方で道路運送法に基づく許可事業でもあります。
利用者を助けたいという気持ちから対応したことが、法律違反になってしまうケースも少なくありません。
今回は、介護タクシー事業者が知っておきたい代表的な2つの事例をご紹介します。
事例① 神奈川県の事業者が東京都から埼玉県まで搬送してほしいと言われた
介護タクシーを運営していると、
「東京から埼玉までお願いできますか?」
という相談を受けることがあります。
しかし、営業区域が神奈川県の場合、この依頼は慎重に判断しなければなりません。
道路運送法では、発地と着地の両方が営業区域外となる旅客運送は、原則として禁止されています。つまり、神奈川県の許可を受けた事業者が「東京都→埼玉県」のような運送を行うことは、原則として認められていません。災害時など、法律で定められた例外はあります。 (e-Gov 法令検索)
ポイント
- 神奈川県 → 東京都 〇
- 東京都 → 神奈川県 〇
- 東京都 → 埼玉県 ✕(原則不可)
- 千葉県 → 埼玉県 ✕(原則不可)
利用者から依頼されたからといって、そのまま受けてしまうのではなく、営業区域を確認することが大切です。
事例② 「自転車だけ運んでほしい」と依頼された
これは私自身が介護タクシーを始めた頃に経験した出来事です。
「体調が悪いので、自転車だけ運んでほしい。」
福祉車両には自転車も積載できますし、困っている方を見ると手伝ってあげたくなります。
しかし、搬送後に違和感を覚えました。
後日、同じ方から再び同じ依頼があり、理由を聞くと、
「運送会社へ頼むより介護タクシーの方が安いから。」
ということでした。
この経験から私は、
「介護タクシーは何でも運べる車ではない。」
ということを改めて学びました。
介護タクシーは旅客運送の許可を受けた事業です。
利用者が乗車せず、荷物だけを有償で運ぶことは、本来の事業目的とは異なる取り扱いとなる可能性があります。 (e-Gov 法令検索)
それ以来、
- 本当に介護を必要とする移動なのか
- 利用者本人が乗車するのか
- 手荷物の範囲なのか
を必ず確認するようになりました。
「知らなかった」では済まされない
介護タクシーは福祉サービスであると同時に、法律に基づく公共交通です。
利用者を助けたいという気持ちはとても大切ですが、
「できること」と「法律上やってよいこと」は必ずしも同じではありません。
法律を知らずに対応した結果、行政指導や行政処分につながる可能性もあります。
まとめ
今回ご紹介した2つの事例は、どちらも現場で実際によくある相談です。
- 営業区域外同士の搬送
- 利用者が乗らない荷物だけの運送
どちらも善意から対応してしまいがちな内容ですが、法律を正しく理解することが、事業を長く続けるためには欠かせません。
宮﨑直人からひと言
私は20年以上介護タクシー事業に携わってきましたが、今でも法律を確認しながら判断することがあります。
介護タクシーは「人を助ける仕事」だからこそ、法律を守りながらサービスを提供することが、利用者の安心にも、自分たちの事業を守ることにもつながります。
この「事業者のための法律講座」では、実際の相談事例や現場で起こりやすいケースをもとに、介護タクシー事業者が知っておきたい法律を分かりやすく解説していきます。

