介護タクシーはどんな車両を選べばいい?20年以上やって分かった車選びと修理の現実

介護タクシーをこれから始める方から、「どんな車を買えばいいですか?」と聞かれることがあります。ハイエースがいいのか、キャラバンがいいのか、それとも軽自動車でも十分なのか。新車にするのか中古車にするのか。開業するときには誰でも悩むところだと思います。

私は2004年から20年以上、介護タクシーの仕事を続けてきました。その間、キャラバン、ハイエース、アトレー、ハイゼット、エブリイなど、いろいろな福祉車両を使ってきました。現在、フレンドシップタクシーでは11台を稼働させていますが、長くこの仕事をしてきて思うのは、「介護タクシーならこの車を買っておけば間違いない」という一台はないということです。

大切なのは、車の人気や評判だけで選ぶのではなく、自分がどんな仕事をしたいのかを考えることです。そして、将来的に人を雇って車両を増やしたいのであれば、「どんな会社にしたいのか」まで考えて車を選んだ方がいいと思っています。

大型車と軽自動車、どちらがいいのか

キャラバンやハイエースのような大きな福祉車両には、大型車ならではの強みがあります。通常の車いすだけでなく、リクライニング車いすやストレッチャーなどにも対応しやすく、ご家族や付き添いの方が複数乗車するような仕事にも使いやすい。荷物が多い搬送や長距離搬送など、仕事の幅を広げたいのであれば、大きな車両を持っていることは大きな武器になります。

ただし、介護タクシーは大きな車があれば何でも解決するわけではありません。

実際に仕事をしていると、利用者さんの自宅が狭い住宅街にあることは珍しくありません。大きな車では自宅前まで入れない、転回できない、駐車できないというケースもあります。そういう場所では、アトレーやハイゼット、エブリイなどの軽自動車の方が圧倒的に使いやすいことがあります。

通常の車いすでの通院などであれば軽自動車で十分対応できるケースも多く、燃料費や維持費などを考えてもメリットがあります。ですから、大型車と軽自動車は「どちらが優れているか」ではなく、それぞれ役割が違うと考えた方がいいと思います。

これから一台で開業するのであれば、まず自分がどんな仕事を中心に受けたいのかを考えてみてください。通常の車いす利用者さんの通院を中心にするのか、リクライニング車いすにも対応したいのか、ストレッチャー搬送まで行いたいのか。付き添いの方が複数乗車する仕事まで受けたいのか。また、自分が営業する地域には狭い道路が多いのか。そうした条件から逆算して車を選ぶ方が失敗は少なくなります。

「この車が人気だから買う」のではなく、「自分が取りたい仕事には、どんな車が必要なのか」を先に考えるということです。

中古車を買うなら、修理代まで予算に入れておく

介護タクシーを開業するとき、中古の福祉車両を検討する方も多いと思います。もちろん、中古車が悪いわけではありません。私たちも中古車を活用しています。

ただし、ここで気をつけてほしいのは、「安く買えたから、安く運営できる」とは限らないということです。

中古車ですから、購入した翌月に故障する可能性もあります。エアコンかもしれませんし、ウインチやスロープなどの福祉装置かもしれません。電装関係の故障もあれば、エンジンやミッションなど大きな修理が必要になることもあります。

そのため、たとえば車両購入のために200万円を用意したとしても、私は200万円すべてを車両購入に使うという考え方はおすすめしません。購入後に何か故障しても直せるように、ある程度のお金を残しておいた方がいいと思います。

自家用車であれば、「今月はお金がないから来月修理しよう」とできることもあります。しかし介護タクシーは、その車で仕事をしています。修理できなければ仕事ができません。だから車両購入費だけではなく、購入後の修理費まで含めて開業資金を考えておく必要があります。

エアコン故障は覚悟しておいた方がいい

車両を長く使っていると、どうしても避けられない故障があります。その代表的なものの一つがエアコンです。

これは特定のメーカーだけの問題ではなく、どのメーカーの車でも故障するときは故障します。ガスが抜けている程度であれば、それほど大きな修理にならないこともありますが、コンプレッサーをはじめとした機関部分に問題が出ると、修理費用が高額になることがあります。

しかも困るのは、いつ故障するのか分からないことです。昨日まで普通に冷えていた車が突然冷えなくなることもあります。

介護タクシーの場合、これはかなり深刻です。真夏にエアコンが壊れたからといって、「今日はエアコンなしで走ります」というわけにはいきません。高齢者や障害のある方、病気やけがで体調に不安のある方を乗せる仕事ですから、エアコンは単なる快適装備ではなく、安全に営業するために必要な設備の一つと考えた方がいいと思います。

エブリイについては、YouTubeなどを見ていると、エアコン関係がウィークポイントとして取り上げられているのをよく見かけます。ただし、ここは誤解のないように書いておきますが、私たちが実際に使用してきたエブリイでは、エアコンの大きな故障は経験していません。ですから、私自身の経験から「エブリイはエアコンが壊れやすい」と断定することはできません。

ネットで言われていることと、自分たちが実際に経験したことは分けて考える必要があります。ただ、中古車を購入するのであれば、エアコンの状態はしっかり確認しておいた方がいいと思います。これはエブリイだけではなく、キャラバンでもハイエースでもアトレーでもハイゼットでも同じです。

そして、エアコンの機関部分については、私は無理にDIYしない方がいいと思っています。

車両が増えると修理代も増えますから、「できるところは自分で直して経費を抑えたい」と考える気持ちはよく分かります。簡単な部品交換や日常的なメンテナンスであれば、自分でできることもあります。しかし、エアコンのように原因の特定に専門的な知識や設備が必要な部分まで安く済ませようとして触ってしまうと、かえって悪化させることがあります。

結果的に「最初から専門業者にお願いしておけば安く済んだ」ということになってしまえば意味がありません。

車を何台も所有するようになると、自分で修理できる技術以上に、「これは自分でやる」「これはプロに任せる」という判断が大切になってきます。特にエアコンの大きな故障については、故障する時期を選ぶこともできませんし、どうしても高額な修理になることがあります。ここは安く済ませる方法ばかりを探すのではなく、ある程度の修理費が発生することを覚悟して車両を所有する必要があると思っています。

修理代より怖いのは、車が止まること

介護タクシーを経営する立場になると、故障についてもう一つ考えなければならないことがあります。それは、修理代そのものよりも「車が使えなくなること」の方が大きな問題になる場合があるということです。

たとえば20万円の修理が必要になったとします。当然20万円は大きな出費ですが、問題はそれだけではありません。その車には明日の予約が入っているかもしれません。修理に一週間かかれば、その一週間の予約をどうするのか考えなければなりません。

別の車へ振り替えられるのか。他の事業者にお願いするのか。それとも新しい予約を断らなければならないのか。

つまり、事業用車両の故障コストは「修理代」だけではありません。休車している期間と、その間に対応できなくなる仕事まで含めて考える必要があります。

だからこそ私は、「壊れない車を探す」ことだけにこだわるよりも、「壊れたときに事業を止めないためにどうするか」を考えておく方が大切だと思っています。

人を雇うなら、車種をある程度揃えた方がいい

ここまでは一台で開業する場合にも共通する話ですが、ドライバーを雇って複数台で営業するようになると、車両選びの考え方はさらに変わります。

私が複数台を運営するうえで大切だと感じているのが、できるだけ同じ車種、あるいは同じ系統の車種で揃えることです。

一人で営業しているのであれば、自分が好きな車を選んでも問題ありません。しかし人を雇うようになると、自分以外の人がその車を扱います。車種がバラバラであれば、ドライバーは車ごとに操作を覚えなければなりません。

シフトレバーや各種スイッチの位置だけではなく、車両感覚、スロープやリフト、ウインチ、車いす固定装置なども車両によって違います。もちろん同じ車種でも年式や仕様による違いはありますが、同じ系統の車両で揃えておけば、ドライバーが別の車へ乗り換えたときの戸惑いをかなり減らすことができます。

複数台で営業していると、担当車両が車検に入ったり、故障したり、ドライバーが休んだりして、急きょ配車を変更することがあります。そのたびに「この人はこの車しか扱えません」となってしまうと、せっかく車両が何台あっても柔軟な配車ができません。

車種を揃えておけば、「今日はいつもの車ではなく、こちらに乗ってください」という変更もしやすくなります。新人教育についても同じで、会社として基本的な操作方法を統一しやすく、教える側も覚える側も楽になります。

当社がキャラバンとダイハツ系に揃えている理由

現在、フレンドシップタクシーでは、実際に稼働させている11台を大きく分けて日産キャラバンとダイハツ系の車両に揃えています。

すべてを一種類の車にしているわけではありません。大型車には大型車の役割があり、軽自動車には軽自動車の役割があるからです。そのため私たちの場合は、「大型車と軽自動車で役割を分けながら、それぞれのカテゴリーではできるだけ車種を揃える」という考え方をしています。

これは実際に人を雇って複数台を動かすようになってから、そのメリットを強く感じるようになった部分です。

車種をある程度揃えておけば、ドライバーが別の車へ乗り換えやすくなります。教育もしやすくなりますし、配車の組み替えにも柔軟に対応できます。さらに同じ車種を何台も使っていると、「この車はこのあたりが弱い」「この走行距離になったらここを確認した方がいい」といった経験も会社の中に蓄積されていきます。

反対に、「安い中古車を見つけたから」という理由だけで、その都度違う車種を買っていくと、購入した瞬間は得をしたように見えても、台数が増えたときに管理が複雑になります。ドライバー教育も車両ごとに必要になり、乗り換えもしにくくなります。

1台だけを見れば安い車が、会社全体で見たら必ずしも安いとは限らないということです。

1台目と11台目では、車の選び方が変わる

私自身、一台で仕事をしていたころと、11台を動かしている現在では、車を見る基準がかなり変わりました。

一台で始めるときには、自分が乗りやすいか、予算に合っているか、自分がやりたい仕事に対応できるかということが重要です。それでいいと思います。

ところが2台、3台、5台と増えてくると、車単体の性能だけではなくなります。ドライバーを教育しやすいか、別の車へすぐ乗り換えられるか、故障したときに別車両へ仕事を振り替えられるか、整備や消耗品を管理しやすいかといった、会社全体の運用まで考える必要が出てきます。

だから、これから介護タクシーを開業する方には、「どの車が一番いいですか?」と考えるだけでなく、もし将来的に事業を大きくしたいのであれば、「この車を5台持ったらどうだろう?」という視点でも考えてみてほしいと思います。

介護タクシーの車は、買ったら終わりではありません。走れば消耗しますし、いつか故障します。車検もあります。修理もあります。それでも毎日の予約を止めるわけにはいきません。

20年以上この仕事を続け、複数台を運営するようになった今、私が車両選びで一番大切だと思っているのは、単純に「壊れない車を探すこと」ではありません。

自分が取りたい仕事に合った車を選び、壊れたときに直せる資金を残し、台数が増えたら誰でも扱いやすい車両構成にして、1台が止まっても仕事全体を止めない。

そこまで考えて初めて、介護タクシー事業者にとっての「良い車両選び」になるのではないかと思っています。

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この記事を書いた人

2004年に介護タクシーを開業し、20年以上にわたり介護・医療搬送に携わる。延べ10万件以上の搬送実績をもとに、介護タクシーの知識や運営ノウハウ、移動に関する課題解決を発信。現場で培った経験と道路運送法・介護制度の知識をもとに、利用者・医療介護従事者・事業者に役立つ情報を届けています。

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