介護タクシー経営で避けて通れない電話対応の問題
介護タクシーを一人で始めると、意外と早い段階で困るのが「電話を誰が取るのか」という問題です。
運転中、介助中、病院への付き添い中。そんなときに限って電話が鳴ります。しかも介護タクシーの電話は、単なる問い合わせではありません。「今日お願いできますか」「車いすでも大丈夫ですか」「階段介助はできますか」「退院でストレッチャーと酸素があります」といったように、その一本が仕事につながる可能性があります。
だから電話には出たい。しかし、運転や介助をしながら対応するには限界があります。
実際、個人の介護タクシー事業者では、運転中や介助中は電話に出ず、あとから折り返したり、留守番電話、LINE、SMS、予約フォームなどを併用しているケースが見られます。ドライバー本人がすべての電話をリアルタイムで取るのではなく、出られないことを前提に受付方法を複数用意する形です。
私自身も以前は、ドライバーをしながらハンズフリーで電話を受けていました。しかし、仕事が増えてくると限界が訪れました。
介護タクシーの予約は、日時と場所を聞けば終わりではありません。出発地、目的地、病院の予約時間、車いすなのかストレッチャーなのか、階段はあるのか、付き添いはいるのか、酸素などの医療機器はあるのか、往復なのか、帰りはどうするのか。こうした内容を確認しながら運転するのは現実的ではありません。
そこで私は、ドライバーと電話受付を分けるためにコールセンターを立ち上げました。
電話対応を分けることで、ドライバーは利用者さんの安全と介助に集中でき、受付側は落ち着いて必要な情報を聞き取ることができます。介護タクシーにとって電話受付は、単なる電話番ではありません。安全な搬送を組み立てるための入口でもあります。
一方で、現在は電話対応の技術も大きく進んでいます。AIによる一次受付では、名前や電話番号、希望日時、用件を聞き取り、文字起こしや要約、担当者への通知まで行えるようになっています。
ただ、介護タクシーの予約をすべてAIに任せるのは、まだ難しい部分があります。利用者さんの状態や必要な介助、機材、医療機器などを確認し、安全に対応できるかを判断する必要があるからです。
そのため現時点では、AIに一次受付を任せ、その後の判断を人が行う形が現実的だと思います。
また、AIではなく、人が対応する電話代行サービスを利用する方法もあります。現在使っている電話番号から転送し、オペレーターが用件を聞き取って事業者へ共有する仕組みです。
介護タクシーを始めたばかりの頃は、自分で電話を取る方法でも十分です。しかし事業が成長してきたら、留守番電話、LINE、予約フォーム、AI受付、電話代行、コールセンターなど、規模に合わせて受付方法を変えていくことが必要になります。
大切なのは、仕事が増えても「社長が全部電話を取る」という仕組みだけを続けないことです。
そしてISNでは現在、地域の介護タクシーや移動支援事業者のために、電話番号転送による人対応型のコールセンター設置を模索しています。
現在使っている電話番号からコールセンターへ転送し、利用希望日時、出発地・目的地、利用者さんの状態、車いすやストレッチャー、階段介助の有無などを受付側で聞き取り、その内容を事業者へ共有する。最終的な配車や受入判断は、それぞれの事業者が行う形を想定しています。
目的は、仕事を一か所に集めることではありません。
地域で頑張っている一人事業者が、運転や介助に集中できる環境をつくることです。
介護タクシーは一人で開業できます。しかし、運転も介助も電話も営業も予約管理も、すべて一人で抱え続ける必要はありません。
ISNでは、階段介助の応援、機材の貸出、看護師の手配、電話受付など、一社では持ちにくい機能を地域で共有できる仕組みをつくっていきたいと考えています。
一人で開業できる。でも、一人で全部やらなくていい。
そんな環境を地域につくることが、これからの移動支援には必要だと思っています。

